研修会・学術資料

鍼灸師のプロフェッショナリズム

昨日は鍼灸師会の学術講習会。

鍼灸師のプロフェッショナリズム~業界の活動と医療連携から見えてくるもの~というテーマで津田昌樹先生にご講演頂きました。

津田昌樹先生プロフィール2016-04-19 12.46.06-1

津田先生は、鍼灸院を開業しながら、学会活動、研究活動、後進の教育に日々奔走されている笑顔の素敵な先生です。

日頃、講習会といえば、医療知識や治療テクニックなどの講習会が多いのですが、専門家、プロフェッショナルとしての鍼灸師の根幹を見直す今回の講義は、色々なことを考えさせて頂きました。

我々鍼灸業界は、以前は非常に狭き門で、限られた一部の優秀な人材や強力なコネクションがある人しか資格が取れない時代がありました。

そこに大きな変化が起こったのは平成8年に起こった「福岡裁判」。

柔道整復師、鍼灸師の養成学校が学科新設を求めて裁判を起こし、学校の新設が認められることとなりました。

門戸が広がり、治療家が増えるのは結構なことなのですが、この10数年で学校が乱立し、入学の倍率が下がることにより学校経営者の学生争奪戦が激化しました。

その結果、今までは望んでも鍼灸学校に入ることが出来なかった学生が大量に入学をし、免許をとって社会に出ることとなります。

その結果起こる学生の質の低下や臨床経験のない開業鍼灸師、治せない&患者さんが集まらないので、マーケティングに走り、酷いと不正請求で経営を成り立たす治療院が出てくる…。

負の連鎖です。

逆に業界にとって良いことも起こりました。

以前は認知度が低く、

「私は鍼灸師です」

と自己紹介をしても

「誰?何?」「怪しい」

といった反応だったそうですが鍼灸師の絶対数が増えることにより、今では、殆どの人が鍼灸、はり、きゅうと言えば大まかに分かって貰えます。

また、数が増え、競争原理が働くことにより多様性が生まれ、今では様々な業界で活躍する鍼灸師がいます。

医療業界はもちろん、スポーツ、研究、美容、介護、健康産業全般に広がっています。

そんな時代だからこそ求められるのが今回の講義のテーマでもある「プロフェッショナリズム」。

プロフェッショナルとは…。

メディアでも盛んに取り上げられているテーマですが、簡単にまとめると

「専門的な知識や技術を持つ集団や個人」

と定義できると思います。

専門的な職業であるがゆえに、一般人や、他業種には理解・判断ができない領域があります。

専門性が高くなれば成る程、知識や技術を用いる「権利や自主性」「自由裁量権」といったものが発生し、これらの行使によって利益を得る以上、自分の専門性に対して真の実力を持ち、「誠実さ」「道徳」「利他主義」「自分の守備範囲で、社会のために努力をする」といった「倫理観」が求められます。

わかりやすく例えると、最近、旭化成がテレビを賑わした「杭打ち問題」があります。

ビルなどの基礎となる杭を地中に埋め込む仕事は、高い専門性が求められ、誰にでもできることではありません。

高い専門性があるが故に高い「自由裁量権」があり、現場の仕事は、専門家達に任せられています。

ここに倫理観が備わっていないと、今回のようなデーター偽装のような「手抜き」「利益至上主義」といった間違いが起きるのです。

私達鍼灸師も、東洋哲学を軸とする医療従事者として、高い専門性を持つ「プロフェショナル」です。

プロフェッショナルで在るが故に、高い治療技術や鑑別能力を有し、常に誠実で患者さんや社会の利益の為に働かなくてはなりません。

しかし、ここ10数年の急激な鍼灸師の増加と、それに伴う負の連鎖により、プロフェッショナルとしての鍼灸師を疑うような出来事があちこちで起こっています。

先日、お会いした学校の先生曰く

「鍼灸師の職業を医療だと思う人!」

と質問をしたら、30人クラスの内、数人しか手を挙げなかったそうです。

治療家である我々が医療でなければ何なのでしょう?

また、鍼灸師の最大の学術団体である「全日本鍼灸学会」の会員数は、学生を含めても、5000名弱。

免許保有者は15万人以上いて、毎年4000名程の鍼灸師が誕生するのにです。

プロフェッショナルである以上、自分の仕事に誇りを持ち、学び続ける義務があり、社会に還元し続ける責任があります。

しかし、今の養成学校や研修先ではこういった哲学や倫理を学ぶ機会が少ないのが現状です。

国家試験合格を第一目標とした学校では、倫理、哲学、時には技術までもが軽視されています。

利益を追求する経営者、経営の苦しい研修先、権利を主張する研修生、では倫理や哲学は軽視されます。

今までもそうであったように、今後も私達鍼灸師が「プロフェッショナル」であり続ける為に何が必要か?何ができるのかを考えさせられる研修会でした。

講義の途中で

「生まれ変わったらもう一度鍼灸師になりたい人!」

という質問があった時、一瞬躊躇した自分があり、その自分が何なのかを考えていきたいと思っています。

 

少し興奮気味でPCに向かったせいで長文になりました。最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

日本鍼灸師会倫理綱領

  • 一、 私は生涯を人類への奉仕に捧げることを誓う
  • 二、 私は常に患者の健康の回復と保持増進を第一に考える
  • 三、 私は患者の信頼に応えて秘密を厳守する
  • 四、 私は良心と誠意をもって治療に専念する
  • 五、 私はたえず鍼灸の学と術について最高の水準を保ち疾病に関する知識を一層深め伝統を守りその伝承に努力する
  • 六、 私は鍼灸治療の有効性を高めその学術的研究の業績を重ねることによって他の医療分野から信頼と協調を確保し患者の治療に努力する
  • 七、 私は鍼灸治療の適応を十分認識し無効な治療を行うことなく更に過誤を犯すことのないように努める
  • 八、 私は常に自己の職責に誇りと責任をもち鍼灸師としての名誉と尊厳をもって鍼灸の発展に努力する
  • 九、 私は治療に当たって宗教国籍人種政党社会的地位の違いによって患者に果たすべき義務を変えることはしない
  • 十、 私は流派を超えて相互に鍼灸師を尊重し鍼灸界の団結を高め鍼灸師の資質向上のために努力する

 

 

 

 

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