ギックリ腰と大腿外側のこわばり
「娘の家の草抜きをしていて、手を伸ばした時にグキッとなり、立てなくなった」
との電話があり、来院されたCさん(仮名)。
70歳の今でも海外に持つ会社の管理を行い、世界中を精力的に飛び回っておられる方です。
息子さんに支えられながら、そろそろと入って来られました。
体を動かして検査をすると、前後屈、側屈全てが痛く、殆ど動かせない状態です。どこが痛むかも本人にもわからないようでした。
典型的なぎっくり腰の急性期の症状です。
検査の後、腰背部の過緊張、脱力感を解く鍼治療を行い、腰の痛みは随分と楽になったが、大腿の外側が強くこわばって歩きにくいと訴えます。
腰痛と合併して大腿外側がしびれたり、こわばったりする原因はいくつかあります。
大腿外側皮神経痛
腰椎2,3番から出た神経が、骨盤の内側を通り鼠径靱帯の下をくぐり、股関節の前面部の縫工筋の間から出てきて大腿外側の表面の知覚を司る神経です。
鼠径靱帯と、縫工筋の間で神経絞扼障害を起こしやすく、
- お腹の出ている人(肥満・妊婦)
- ベルトやコルセット、下着による圧迫
- 縫工筋や腸腰筋の過緊張による神経圧迫
などが原因とされています。
上前腸骨棘内下方をたたくと響く(チネルサイン)が特徴です。
小殿筋のトリガーポイント
股関節外側部の深部にある筋肉「小殿筋」の緊張が強いと「トリガーポイント」が形成され、大腿外側部への放散痛が起こります。
小殿筋の小さなしこりをさがして圧迫すると、同じように大腿外側に放散痛が起きます。
脊髄神経の感覚異常
皮膚表面には、脊椎の神経根から伸びている感覚神経によって支配され、「デルマトーム」という領域に分けられています。
大腿外側は、L2~L5の領域で、知覚異常の範囲を筆やルーレット(ギザギザのついたローラーのようなもの)で検査し、障害部位の判定を行います。
今回の症例では、小殿筋のトリガーポイントが強く検出され、鍼治療&グラストンテクニックによる筋膜リリースを行ったところ、
「非常に歩きやすい」
と喜んでおられました。
ギックリ腰といっても様々なパターンがあり、その病態にあった治療を行わなければ良くならないどころか、症状が強くなることもあります。
通常は、3日程安静にしていれば良くなる事が多いのですが、筋肉の障害だけでなく、関節の障害や、神経絞扼などがあるパターンは、早期の治療が必要です。
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