8月の初旬から当院にとって、初めてとなる研修生を受け入れました。
大阪の鍼灸学校に通う3年生の学生さんです。
私の様に、一人で運営している鍼灸院に見学者や研修生が来るというのは大きなインパクトがあります。
受け入れ前の不安
患者さん目線では…
- 1対1の患者さんと鍼灸師という距離感や関係性が変わる
- 他者に聞かれたくない話、見られたくない部分がある
- 見られている、聞かれている、調べられているという不安感
などがあるかもしれません。
受け入れ側の鍼灸師としては
- どんなキャラクターの研修生が来るのか?
- 研修生がいることにより院内の雰囲気が変わる
- 自分自身の臨床をうまく伝えられるか?
- 臨床外の時間を、どのように過ごすか?
などの不安もありました。
何せ、大勢スタッフのいる院ならともかく、一人から二人になるというのは非常に大きな事なのです。
事前に患者さんにもアンケートをとって、了承を得られた方のみを、研修生が来ている日に予約を取るようにしました。
研修生がやってきた
やってきたのは20歳の女の子。
事前に履歴書などもあったのでわかっていたのですが、いかつい男子や、言葉遣いや表情が合わない子だとどうしようかと思っていましたが、その不安はなさそうで一安心。
挨拶もそこそこに、ほぼ途切れることのない臨床現場を見学して貰いました。
事前に、当日来院予定の患者さんのカルテに目を通してもらい、既往歴と主訴、治療方針、治療経過などの説明を行います。
見学中はここぞというポイントは患者さんの同意を得て、触って貰ったり、説明をしながら診療を進めていきました。
心配していた患者さんの反応も悪くなく、
「なんで鍼灸学校に入ったの?」
「ここで就職させてもらったら?」
など楽しんでおられるようでした。
また、私と1対1では出てこない表情なども垣間見られ、私が修行中に師匠から
「臨床は漫才だ」
と言われていたのを思い出しました。
患者さんと先生との掛け合い、スタッフと先生、患者さんとスタッフ。
立場の違う三者がそれぞれの役割でコミュニケーションを取ることが潤滑油となって、臨床の場が回りだすのです。
患者さんに直接言えない事を、私達スタッフをダシに使って伝えるということをよくされていた師匠でした。
久々に思い出したその感覚が新鮮なものとして蘇りました。
研修生の反応
私も開業している以上、臨床に関しては誰にも負けない自信をもって臨んでいます。
しかし、国家試験を受けたのは遥か昔。自分の知識や考え方が偏っていることも自覚しています。
そんな私がまっさらで、国家試験前の知識をぎゅうぎゅう詰め込んだ学生さんを受け入れていいものかも悩みましたが、私のすること、話すことが知らないことばかりだったようです。
学校に付属する鍼灸センターでの実習や、授業での実技講師の臨床も見ているのですが、考え方、方法論も大分違ったようです。
鍼灸は術者の個性や考え方が色濃く反映される医学です。
10人鍼灸師がいたら、皆違う術式を取ることもありえます。
私の今までの人生経験の上に積み上がった東洋・西洋医学の学問や、来院された患者さんたちから学んだことをしっかりと見せる事ができたのかなと思っています。
私の学生時代は、正社員でサラリーマン(医療機器の営業)をこなしながら、学校、休みの日は丸一日図書館に閉じこもったり、興味のある先生の講義を聞きに行ったりと、鍼灸以外のことは殆どない生活でした。
本も山程買ったし、その頃から開業に備えて備品を買い始めていました。
手当り次第、身近な人を捕まえて、治療という名のもとに人体実験(笑)を行っていました。
そんな話も環境の全く違う彼女にとっては驚きの連続だったようです。
治療時間外では
患者さんを診ている以外の時間は普段は書類仕事や院内改装プランを練ったり、自身のトレーニングをしたりしているのですが、この期間は、極力彼女のために時間を使いました。
就職先が決まっていないようなので、仲間の鍼灸師に連絡をとって、情報を収集したり、苦手な科目の勉強方法を教えたり、あとは、鍼の刺し方を伝えました。
今回特に時間を割いたのは、坐骨神経痛や脊柱菅狭窄症、腰椎ヘルニアで多用する「坐骨神経刺鍼」
開業鍼灸師でしたら、できて当然の技術ですが、学校では習ったことがないらしく、ぜひ覚えてほしいと打ち方の講習と、練習を行いました。
まずは体感してもらい、そして私のお尻を教材に練習をして貰いました。
うまく鍼が届くと、足の指先までビーンという刺激が届くのですが、何回やってもできません。
過去の研修会のDVDや練習用の鍼を持たせて、家で家族を教材に練習を重ねました。
そしてついに成功!
今回の研修で一番の満面の笑みがこぼれました。
最後に
今回の研修期間で、どれだけ鍼灸治療の素晴らしさを伝えられたかはわかりませんが、私が鍼灸が大好きだということはしっかりと伝わったことでしょう(笑)。
これからしっかりと基礎を学び、自分のカラーを見つけて、立派な鍼灸師として羽ばたいてほしいと思います。
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