「泌尿器疾患へのアプローチ」~超高齢者社会に対応する鍼灸~
というテーマで、明治国際医療大学の北小路 博司先生に講義をして頂きました。
日頃、臨床に携わっていると、メインの疾患ではありませんが、泌尿器の症状を抱えた方が多く来院されます。
- 頻尿
- 夜間頻尿
- 尿意切迫
- 尿失禁
- 排尿困難
- 排尿痛
などなど…。そして、その症状の裏には様々な疾患が潜んでいる可能性があります。今回は主に、
- 過活動膀胱
- 前立腺肥大症
の臨床所見と、鍼灸治療の実際について講義をして頂きました。
過活動膀胱
過活動膀胱は、国際尿禁制学会において
「切迫性尿失禁の有無に関わらず、通常、頻尿および、夜間頻尿を伴う尿意切迫」を特徴とする症候群
と定義されています。
- 尿をする回数が多い
- 急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがある
- 我慢できず尿をもらすことがある
日本では約、840万人の患者がいることが推測されています。
発生のメカニズムとしては、神経系統の障害によるものや
- 脳血管障害
- パーキンソン病
- 認知症
- 脳腫瘍
- 脊髄損傷
- 多発性硬化症
- 脊柱管狭窄症
非神経因性である
- 下部尿路閉塞(前立腺肥大などにより尿路が圧迫される)
- 加齢
- 骨盤底筋の脆弱
- 原因不明
などが挙げられます。神経因性のものは、基礎疾患へのアプローチが必要ですが、非神経因性の症状は、生活習慣の改善や、リハビリ、薬物療法、そして「鍼灸治療」で改善が期待できる疾患です。
前立腺肥大症
男性生殖器の一つである前立腺(膀胱の下で、前立腺の中央を尿道が貫通する)が肥大を起こし、尿道を圧迫する症状です。
- 会陰部(睾丸と肛門の間)の不快、圧迫感
- 残尿感
- 頻尿、夜間頻尿、尿失禁
- 放尿力の低下
- 出切らない(切れが悪い)
などの症状がある方は疑う必要があるかもしれません。
泌尿器疾患への鍼灸治療
泌尿器疾患に対する鍼灸治療は、世界各地で行われており、良い研究結果を残しています。
今回、講演して頂いた北大路先生も、ラット等を使った基礎研究から、病棟での臨床研究まで、長年精力的に行われており、いくつかご紹介頂きました。
中髎(ちゅうりょう)
第3後仙骨孔部(仙骨の3番目の穴)に下から上へ斜め45度で刺入し、重い響きと、ねばっという刺感があれば良いとの事でした。
北小路先生らの研究によれると、中髎穴への取穴で、切迫性尿失禁の70%、前立腺肥大症における平均尿流量(AFR)が有意に改善したそうです。
その他に、中極穴(恥骨結合の上)への温灸でのデーターや、三陰交(後脛骨神経)、陰部神経への鍼通電のデーターもご紹介頂きました。
今回の研修会も非常に勉強になりました。
もっと自分なりに深めて臨床に活かしていきたいと思います。
記事へのコメント