四肢の症状

変形性膝関節炎・手術?それとも…

膝関節の軟骨がすり減り、半月板の変性や断裂がおきたり関節が変形するなどして関節内に炎症を起こし、膝の痛みが生じる「変形性膝関節炎」。

40代以降の発症が多くみられ、1000万人以上の患者さんがいると見られています。

当院でも多くの膝の症状に苦しむ患者さんが来院されますが、病院を受診して、

「膝の骨がすり減って痛みが出ています。手術をしましょう」

と勧められ、何とか手術を回避したいと来院される方の割合が多いのです。

変形性膝関節炎の症状

初期のころは起床時や長く座っていて1歩目を踏み出した時の違和感。しばらく動いていたり、休むとこわばりや痛みは治まります。

徐々に進行すると痛みの頻度が増え、膝が曲がらない、伸び切らないなどの症状が現れます。

膝のお皿の周囲に熱を持って腫れたり、コツコツ、ゴリゴリという音が聞こえる時もあります。膝と膝の隙間が開いてきて、O脚が目立つようにもなってきます。

さらに症状が進むと立っていても、歩いていても痛みが強くなり、日常生活に支障をきたしたり、活動範囲が狭くなるなどが起こります。

そして、活動性が落ちて家に閉じこもり、生活習慣病や認知症といった2次的な病気に繋がる恐れがあります。

何とか早期に症状を食い止め、天寿を全うするまで、自分の足で歩いて活動したいところですが、なかなかそうはいかない現状です。

何故治らない?

膝の痛みで一般的に処方される治療は投薬治療と運動療法です。

痛み止めや炎症を抑える張り薬や飲み薬、関節内の循環を良くし、炎症を抑える注射や、膝周囲の筋肉を鍛えるトレーニングやインソールなどが処方されます。

この治療で一時的に良くなる方は多いのですが、また再発→悪化をたどる方も多いのが現実です。

では、なぜ治らないのでしょう?

そこには根本的な大事な視点が抜けているからです。

  • 重力に対する膝関節への負荷
  • 筋肉や骨、膜などが互いに引っ張り合う構造のバランス

重力に対する膝関節への負荷

こちらの動画をご覧ください。

70代の膝の痛みを訴えて来院された患者さんです。

5年前に左膝の手術(人工関節)を行い、今度は右膝も痛みが強くなり、病院では手術を進められている方です。

左膝が接地した時に比べて、右膝が接地した時は内側が反っています(内反膝)。

  • 右肩が前下方に突っ込み、上体の重心が右に傾いています。
  • 右足が接地した時に、骨盤が大きく右側に振られているのも分かります(sway)。
  • 右足関節も接地時は内側に倒れ、内側アーチの減少が見られます。

これらの事から、歩行のたびに、右膝に多くの負担がかかっていることが良くわかります。

静止した姿勢です。

典型的なスウェイバックです。

お尻が下がり、膝が曲がり、お腹が突き出て背中が丸くなっています。

これらの事が複合的に膝への負荷を増大させ、膝関節局所の変形よりも大きな影響を与えていると推察しました。

筋肉や骨、膜などが互いに引っ張り合う構造のバランス

「テンセグリティー構造」という言葉を聞かれたことはありますか?

圧縮力と張力の力のつり合いによって、構造が自己安定する構造システムで、橋やドームなどの構造にも応用される力学です。

面白いものでは、宙に浮く構造物なども作られています。

テントに例えると、骨格としてのポールがありますが、ポールだけでは倒れてしまいます。

引っ張る力としてのロープや布があることで、支柱、ポールが安定するのと同時に、ポールがあることでテント内の空間が確保され、ロープや布のけん引力、重力も生かされるのです。

人体も同じことで、骨(ポール)があることで構造として、空間としての人体構造が成り立ち、筋肉や皮膚、軟部組織などのけん引力、重さ、膨張力などで骨や関節が安定すると考えます。

そしてこれらの力学は、1つの関節局所にだけで働くものではなく、つま先から頭の先までの様々な骨、筋肉、皮膚、軟部組織、内蔵etc…の「支える」「引っ張る」力で成り立っているものだと考えています。

膝が痛いからといって、膝周囲の筋肉トレーニングやマッサージをしても、構造としての膝関節が治らないのは容易に想像できるのではないでしょうか?

もっと幅を広げれば、構造だけでなく、精神、環境といったものも含めた「テンセグリティー」の要因が存在しそうですが、ややこしくなるので今回は置いておきます。

そして…

先ほど歩行を見ていただいたNさんの治療ですが

鍼灸院でできることといえば…

  • 局所の鎮痛、炎症除去
  • 不必要に引っ張っている組織をリリース
  • 働いていない組織への神経伝達の促進
  • ご自分の姿勢や歩行、動作をしっかりと認識していただく
  • トレーニング、生活指導

などです。

ご自分では、

  • 不必要に引っ張っている組織のリリース、ストレッチ
  • 働いていない組織の神経伝達促進、補強
  • 日常動作の改善、見直し
  • 運動量を増やす(痛み無くできること)

などで、どちらかというと患者さんのやることの方が圧倒的に多いのです。

私たちが関われるのは、生活の中の本の1時間程度。

気づきと体が変わる切っ掛けを与える程度でしょうか?

ご自分で気づいて、変わって頂かないと本当の治癒には向かいません。

今では畑仕事や家事を精力的にこなし、もちろん痛みもほぼ感じずに過ごせているNさんですが、今後も継続した自助努力が必要となります。

私は手術や投薬を否定するわけではありませんが、Nさんのように、ご自分で頑張って変わっていける方にはそういった機会があるべきだと思っています。

症状がどうしようもなく進行してしまった方や、ご自分で頑張れない方へは手術などの検討、ご紹介もさせて頂いています。

どのような治療を受けるかは、その人の人生観とも大きく関わってくる事ですので、多様性をもった医療体系の一角として、三重県の片田舎で今後もがんばっていきたいと思います。

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