
肩関節の痛みの原因はさまざまですが、今回は、エコー検査で治療ターゲットが発見できた症例です。
来院された60代男性は、数か月前から肩に違和感があり、力が入りにくい症状を感じていました。痛みはそれほどでもなく、限局した痛みの箇所もないのですが物を肩以上の高さに持ち上げたり、お尻を拭く動作をすると力が入らないといった感じです。
整形外科を受診して検査を受けましたが、肩の炎症があるので、2週間炎症止めを服用してくださいと薬を渡されただけでした。
徒手的な検査をしてみると、肩の挙上や外旋などは特に異常はないのですが、他動的に外転をさせると、肩甲骨が一緒に挙上してしまう動きがあり、肩前方組織の柔軟性低下がありました。そして、上腕内旋がMMT4と低下していました。
上腕二頭筋腱テスト(ヤーガーソン、スピード)なども異常はありませんでした。ただ、上腕結節間溝に圧痛があり、エコー検査をしたところ、二頭筋腱が低輝度に写る画像所見が得られ、上腕内旋で少し結節間溝から二頭筋腱が逸脱する動きが観察されました。
二頭筋腱の亜脱臼を伴う炎症により、肩甲下筋など腱板の出力が落ちて不安定になっているとの推論を元に、結節間溝や肩甲下筋、上腕二頭筋への鍼治療を行い、肩関節周囲組織へのグラストンテクニックとモビライゼーションを施したところ、挙上時の不安定感が軽減され、内旋も少し力が入るようになりました。
その後、トレーニングルームにて肩甲骨安定のための軽いチューブエクササイズを行い、自宅でのエクササイズ指導も行いました。
二頭筋腱の亜脱臼が気になりましたので、主治医の整形外科に再検査を依頼し、MRI検査を行いました。
帰ってきた画像診断報告書には「棘上筋、棘下筋のわずかな断裂損傷の可能性があり、上腕二頭筋腱が結節間溝から脱落気味で同部や肩甲下筋腱損傷の疑いもあります」
との事でした。徒手所見と画像診断は概ね合っているようでしたので、その後も二頭筋腱炎症への処置と、肩甲帯の可動性、安定性への施術とトレーニングを行っています。
今回の症例は、エコーがなければ、亜脱臼には気付くことができず、違う方向で治療を継続していた可能性がありました。
治療や検査の「見える化」で、今後も精度の高い治療を目指して日々研鑽していきます。
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