
80代女性、三叉神経(下顎神経)痛の症例です。
5年くらい前から、何かの拍子に下顎の痛みを感じ、「三叉神経痛」と診断を受け、薬物療法で痛みのコントロールを行っていました。薬でコントロールできない激痛もたびたび起こり、血管や神経を移動させる手術も勧められています。
三叉神経痛とは…?
顔面部に分布する神経で、耳の後ろ辺りから、三つの枝(眼神経、上顎神経、下顎神経)に分かれ、顔面部の知覚を司どっています。この神経に、血管による圧迫や周囲組織の癒着などにより「この世で感じる最も強い痛み」と表現されるような痛みが発生します。抗てんかん薬や神経ブロック注射、ガンマナイフ治療、手術などが行われています。
この患者さんは1年前から当院に通院されていて、鍼治療を行うと、2~3か月くらいは痛みなく過ごせる事から、定期的に通院をされています。
今回は、洗顔時に冷たい水で顔を洗い、痛みが強くなったとの事でした。耳の付け根から、下顎縁、オトガイ部、頬骨下縁などに強い圧痛点がありました。
治療は側臥位で圧痛点や咀嚼筋、舌骨下筋群、胸鎖乳突筋などへの刺鍼を行いました。局所への鍼治療と共に、胸椎や肩甲骨の可動性を高める整体治療や、頭頸部安定のトレーニングを行っています。
治療後はNRS(最も強い痛みを10とした痛みの指標)9→1とほぼ痛みが消失していました。
この方は、円背が強く、起立時には、頭部が前方に大きく傾きます。そのため、頸部、顎部、頭部の筋群が強く引っ張られ、三叉神経への持続的な刺激や、ねじれが生じているものと思われます。
鍼治療により、局所の緊張緩和や癒着組織のリリースをい行い、肩甲帯のリリースやトレーニングで頭部の位置を少しでも正常な方向に導くことで、痛みのコントロールができているのだと感じています。
これからも、趣味の農作業や孫守りなど、やりたいことがいっぱいの精力的な方なので、しっかりとサポートしていきたいと思います。
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