半月板の損傷によって起こる疾患です。
症状と原因
膝の関節は骨だけでは非常に不安定な構造です。
走る、ジャンプする、蹴るなど、様々な動きを可能にするには、関節の安定と衝撃の分散が必要となります。
膝を構成する大腿骨と脛骨の間には、半月状の軟部組織が挟まっていて、この半月板があることにより、骨どうしがぶつからないでスムーズな動きが出来るのです。
この半月板に強い衝撃(特に捻りを伴った)がかかることにより「割れる」「剥がれる」といった障害が起きるのです。半月板の損傷には急性と慢性があります。
急性の半月板損傷はジャンプの着地や、横からのタックルなどで膝に過剰な負荷と捻るが加わった時に起こります。
膝の激しい痛みと炎症による熱感、膝の伸展制限などが起き、歩行不能となる事もあります。
好発競技:サッカー・テニス・野球・スキー・バスケットボールなど
半月板の損傷は、約6割で前十字靱帯や内側側腹靱帯の損傷を併発しますので、鑑別には注意が必要です。
慢性化すると、関節部の炎症が起き、水腫や血腫(水や血が溜まる)を合併します。
関節の可動域制限や、カラダの使い方の変化による筋委縮などが起き、変形性関節炎へと徐々に進行していくパターンも多くみられます。
慢性の半月板損傷は、無症状で進行する事が多く、繰り返しの膝への負担や老化による変性などで起こります。
特に、平泳ぎのような捻りが加わる動きは半月板を徐々に摩耗していきます。
診断と治療
半月板の診断はMRIで行います(レントゲンでは写りません)。
徒手検査では、半月板に負荷をかけるマクマレーテストやアプレーテスト等を行いますが、損傷している半月板には危険を伴う検査ですので、通常急性期は行いません。
関節の可動域を改善させ痛みを軽減する手技療法や鍼灸治療。筋委縮予防のリハビリテーションなどを行います。
手術適応の場合、半月板の損傷部位によっては、縫合による修復も可能ですが、血流の乏しい関節内では修復出来ない場合が多く、損傷部位の除去となります。
半月板損傷の症例(20歳学生)
サッカーの練習中、右側方からのスライディングを受け右膝を捻り受傷した。膝の腫れと痛み、伸展制限があり、整形外科を受診した。
「半月板損傷」との診断を受け、保存療法(電気治療や鎮痛)を続けていたが腫れが治まっても動きや痛みが改善しない為、来院した。
屈曲、伸展共に制限があり、屈曲から伸展時の引っ掛かり感もありました。腫脹もあり膝周径の左右差が2cmありました。
鍼灸治療と筋膜の癒着を外す治療で関節周囲の筋肉をゆるめ、膝蓋骨・膝関節の動きを改善する手技療法を行いました。
治療を重ねる毎に、可動域制限が改善し、引っ掛かり感も感じなくなりました(クリック音は残りましたが)。
本人のリハビリテーションへの意識も高く、1か月後には徐々にですが練習に参加し、今では完全復帰で活躍しています。
半月板損傷は一度起こしてしまうと再度の痛みや違和感を感じる事も多く、継続的なリハビリテーションが必要な症状です。
記事へのコメント