はじめの一歩通信vol.53〜鍼通電〜
鍼灸院で受ける治療方法は、同じ病や身体の方がいない事から、鍼の治療方法でも、「刺さない鍼」「刺してしばらく置いておく」「刺して回したり、上下させて動かす」「針にお灸を付ける」など様々なバリエーションがあります。今回は、鍼に電気を流す「鍼通電」について解説したいと思います。
当院では、1~500HZの低周波で、周波数、波形、パターンなどを細かく設定できる機器を採用しています。どういう反応を引き出したいかの目的に応じて設定を変えています。
医療機器などの低周波、高周波治療器などが皮膚の上から電気を流すのに対して、鍼通電は皮膚の下の治療対象部位まで鍼を入れて電気を流すので、皮膚抵抗を受けない分、刺激が少なく大きな効果が得られます。また、繊細な手先の感覚を養った鍼灸師がミリ単位の治療部位を探り、鍼をするので大きな相乗効果が得られるのです。
鍼通電の目的は大きく分けて
①痛みの緩和
②筋緊張、血行不良の緩和
③脳内物質分泌、自律神経の調整
などが挙げられます。
痛みの緩和
ヒトの痛みが起こる仕組みは複雑で、それぞれのケースに応じた鎮痛方法がありますが、鍼通電では、痛みが伝わる道をストップさせる、痛みの閾値を上げて感じにくくさせる、脳から麻薬様物質を出させて麻痺させるなどの作用が確認されています。鍼通電の麻酔効果を使って手術を行うケースもある程強力な鎮痛効果が確認されています。
筋緊張、血行不良の緩和
低周波治療器や電気風呂に入ると筋肉が勝手に動いたり、押されるような感覚がありますが、鍼通電でも、筋肉の収縮運動を促し、筋代謝や筋ポンプ作用亢進により、皮膚や筋血流の増加による筋緊張や疲労の緩和が期待できます。ピンポイントで狙った筋肉だけ動かせるので負担が少なく、効率の良い治療方法です。
脳内物質の分泌、自律神経の調整
電気刺激は周波数により、様々な脳内物質の分泌を促します。モルヒネ様物質のエンドルフィン・エンケファリン、ダイノルフィン、精神安定などに関わるセロトニンや自律神経に関わるノルアドレナリンなど、症状やその人のタイプによって刺激の調整を行い、目的の反応を引き出します。
古代から使われていた電気療法
電気治療の歴史は古く、2500年前にエイが発生させる電気で脱肛や、電気うなぎで頭痛を治療したなどという記述があります。
日本で最初の電気治療は、江戸時代の発明家、平賀源内が作った「エレキテル」です。静電気を発生させ、カラダの痛みを取ったとされていますが、半分見世物だったようです。
その後は様々な研究があり、現在の医療現場では無くてはならない存在となっています。
鍼麻酔の歴史
電気を使った針治療に麻酔作用があることは上記の通りですが、この事が世界中に広まったのは、1971年のニクソン大統領が中国に訪問した時です。
鍼麻酔を使った手術の現場を見た大統領は、この事をアメリカに持ち帰り、大規模な鍼の研究を開始することとなりました。
現代鍼灸の大きな歴史の転換点となりました。
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