小雨降る中、松阪シティーマラソンのランナー達のケア活動に参加をしてきました。
三重県鍼灸師会は、伊勢マラソン、津シティーマラソン、名張青蓮寺湖駅伝をサポートしていますが、松阪マラソンは今年が初めてとなります。
今年はハーフマラソンまでですが、再来年からは三重県初のフルマラソン開催が決定していて、勢いのある大会です。
イベントブースのど真ん中の場所にポータブルベッドを並べ、ランナーの皆さんの様々な訴えに対応しました。
- 本番前の体調調整
- 練習のし過ぎで足や腰が痛む
- 持病の腰痛をなんとかしてほしい
- 5kmをすぎるといつも膝が痛くなるので予防したい
- 走る前、走った後はどんなことをしたらいいのか?
- 走った後で足やおしりが痛む
などなど、マラソンを走る前と走った後のたくさんの方へのケアが行えました。
僕一人で20数名の方の担当をしましたが、中でも心に残った方2人をご紹介します。
レース直前になって現れた原因不明の股関節痛
レース開始の15分前に中学生の男の子がブースに来ました。
お母さんの肩を借りながらなんとか歩いている状態です。
普段故障の少ない選手で、今朝も特に異常はなかったそうです。
アップをしていて、特にひねったり、変な動きをしたわけでもないのに、突然右腰~おしりにかけて重くなり、数分後には痛くて歩けなくなったとのことでした。
右足に体重をかけると痛くて崩れ落ちそうになるようです。
レース時間も迫っています。
腰からハムストリングス、股関節から膝にかけて触診をしていくと、右股関節がなんとなく腫れぼったい感じがします。
仰向けで寝てもらい、股関節から右腸骨(骨盤)内側を触診すると、異常な筋緊張がありました。
「これだ!」
手技を使って、右大腰筋、腸骨筋にアプローチをし、歩いてもらうと、痛みはほぼゼロです。
選手もお母さんも大喜び。
挨拶もそこそこに、集合場所へ走っていきました。
私もはじめてのフルマラソンの時に経験がありますが、レース前の精神的な緊張が強いときは、普段だと起きないような痛みが起きる場合が多々あります。
わかっていると、心を落ち着かせて、緊張している部分を緩めていくといいのですが、大抵は焦っているのでそんなに上手くはいきません。
当然、棄権という悔しい選択を強いられます。
レース後、無事に走れたとにこやかに挨拶に来てくれました。
10kmを超えると出てくる膝外側の痛み(ランナーズニー)
ハーフマラソンのランナーが続々と帰ってきて、汗びっしょりの選手たちでブースが溢れていました。
その中の一人、富山から参戦した20代の選手のAさん(仮名)。
いつも意欲的に練習を重ねているのですが、10kmを超えると持病の大腿外側~膝外側の痛みが出てきます。
今日のレースも同じ様に痛みが出てきたそうです。
触診をすると大腿骨外顆に圧痛があり、腸脛靭帯(太ももの外側の靭帯)がパンパンに張っています。
ober test(オーバーテスト)も陽性です。
典型的な腸脛靭帯炎(ランナーズニー)です。
腸脛靭帯を引っ張る大腿筋膜張筋や大殿筋、外側広筋などを緩めればある程度の症状は緩和するのですが、繰り返すランナーはランニングフォームや姿勢に原因があることが多いです。
Aさんもランニングフォームをチェックすると、右足接地の時に股関節が大きく右にブレてしまいます。
上半身が右に倒れ、右腕の後方への振りも強い事から、上半身も不安定です。
こういった事が痛みにつながっていると説明をし、いくつかの筋肉に刺激を入れてもう一度走ってもらうと大分安定するとの事でした。
Aさんの場合はトレーニング指導をして終了しました。
普段、鍼灸院で診察をしているとじっくりと検査や問診ができ、刺入する鍼や様々な治療器具を使って治療ができます。
競技場では、持ち時間は一人10分~15分。
道具もテーピングと円皮鍼(シールのついた短い鍼)のみ。
どんな方が来るのかも分からず、でも一定のクオリティーが求められます。
このような緊張感と、学びを得るために、そして、ランナーのみなさんに鍼灸の良さを知ってもらうために、僕たちはフィールドでボランティアをしています。
みなさんまたお会いしましょう!
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