
当院では、客観的データに基づく鍼灸医学の発展と臨床精度の向上を目的として、学術大会での症例報告を定期的におこなっております。
このたび、「第75回 全日本鍼灸学会学術大会(2026岡山)」において、日本リカレント教育研究センターの銭田良博先生との共同による、エコーガイド下鍼通電療法の症例報告を発表いたしました。
1. 症例概要と初診時所見
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対象: 56歳女性、バドミントン愛好家。
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主訴: 数年前より右肩痛があり、来院1週間前のサーブ動作時に疼痛と挙上困難を認めたため来院。初診時の主観的痛みはNRS 8(0〜10の11段階評価)。
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身体所見: 円背、巻き肩の姿勢傾向を認め、上腕骨結節間溝部での上腕二頭筋長頭腱(以下、LHBT)および周囲軟部組織の腫脹と圧痛が陽性。Speedテスト陽性。右肩前方挙上(170°、90°付近で疼痛)、セカンドポジションでの外旋時に最大疼痛を誘発。
2. 超音波エコー評価による病態観察
健側との比較により、患側において以下の動態および構造的特徴を確認いたしました。
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LHBTの逸脱(脱臼): 外旋時に、LHBTが結節間溝から内方へ移動する「逸脱所見」を確認。
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水腫貯留: 患側LHBT周囲に低エコー像(水腫貯留)を確認。

3. 解剖学・生理学的根拠に基づく鍼通電アプローチ
本症例に対する刺鍼および通電は、以下の目的に基づき実施いたしました。
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エコーガイド下での精密刺鍼:
腫脹および炎症を起こしている腱鞘内への直接的な刺激を避けるため、エコー観察下で針先を確認しながら刺鍼を行いました。
1本は三角筋下層のLHBT浅層、もう1本はLHBT浅層と結節間溝の骨膜上へ刺入し、2Hz・12分間の低周波鍼通電を行いました。これにより、律動的な筋収縮(筋ポンプ作用)による水腫の排泄および組織内圧の減圧を意図しています。

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肩関節フォースカップル(動的安定性)の正常化:
円背・内旋に伴う上腕骨頭の前方偏位を補正するため、周囲筋群(烏口腕筋、肩甲下筋、棘下筋など)および烏口上腕靭帯(CHL)周辺に対しても並行して鍼通電を実施しました。これにより、上腕骨頭の求心位保持能力の回復を促しました。

4. 臨床経過および結果
計7回の施術期間中、同様の手法を継続した結果、以下の客観的変化および主観的評価の推移を認めました。
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Day 0(初診): NRS 8。施術直後は屈曲時疼痛が消失。
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Day 7: NRS 6。サーブポジションは不可。
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Day 14: 動作改善を認め、サーブ動作が制限付きで可能となる。
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Day 28: 日常生活における疼痛は消失(肩後面に一部疼痛あり)。
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Day 49: 超音波エコー検査にて、LHBT周囲の水腫減少および外旋時の逸脱所見の改善を確認。
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Day 65: NRS 1。制限なくサーブ動作を行える状態まで回復したことを確認し、本介入を終了いたしました。
5. 考察と今後の展望
本症例における結果は、エコーガイド下での正確な局所介入(水腫の減圧)と、周囲筋群へのアプローチによる肩関節フォースカップルの適正化を組み合わせた包括的戦略が寄与した可能性が考えられます。単一の介入効果のみを証明することは困難ですが、局所と周囲の力学的環境の双方を補正することが、早期の競技復帰につながる有効な選択肢となる可能性が示唆されました。
今後は、LHBT通電単独の客観的評価の蓄積を含め、複数例での検証を進め、エコー所見と臨床症状の相関関係をさらに追究してまいります。
肩関節の慢性的な疼痛やスポーツ障害に対する治療の選択肢として、当院では今後も客観的事実に基づいた手技の精度管理に努めてまいります。





















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