日本の鍼灸界では最大の学術団体である全日本鍼灸学会が札幌で行われました。
3日間の日程でしたが、私は残念ながら2日間のみの参加でした。
当日の朝4時発で関空へ向かい、9時からの学会に遅れて参加、次の日も終わってすぐにフライトと、折角の北海道を楽しむ時間もなくバタバタの日程でしたが良い時間が過ごせました。
学会では、幅広いテーマでの講演会や実技講習会、論文発表などが行われるのですが、今回は特は特に面白い考え方に触れることができました。
日頃、私たちは痛みや体の不具合を訴える患者さんの治療を行っていますが、実際のカラダの機能不全や障害に加えて、患者さん自身の考え方が問題になることが多々あります。
いわゆる「破局的思考」と呼ばれる思考回路で、痛みに対してネガティブな感情を抱く思考の事を言います。
「自分は痛みに対して無力である」
「痛いから何もできない」
と常に痛みについて考え、その考えから逃れられなくなり、余計に痛みを強く感じるようになる思考パターンです。
こういった考え方にたいして、現代医学では、
- 認知行動療法
- 自律神経訓練法
- 催眠療法・音楽療法・動物療法・薬物療法
など、痛みに対する考え方の転換を図ったり、封じ込めたりといったトライを続けていますがなかなか難しい現状です。
こういった慢性の疼痛にたいして、今までは
痛みの発生→対処法を処方
とった流れでしたが、我々東洋医学の得意とする「予防」を取り入れていこうといった研究が発表されていました。
予防といっても、ストレッチやお灸、運動といったカラダへのアプローチではなく、痛みやカラダに対する認知、考え方の予防です。
発表して頂いたのは、明治国際医療大学教授の伊藤和憲先生です。
伊藤先生は、慢性疼痛患者の破局的思考に、幼少期のアレキシサイミア(失感情症)の関与が大きいといった事に着目をして、その予防として、小学校や中学校で、定期的に養生教育の時間を設けているそうです。
痛みとの向き合い方、ストレスへの対処法、自分自身のカラダへの興味など、早期に自分自身のカラダの変化に気づき、柔軟に対処していけるような思考パターン、豊かな感性を幼少期から育てていこうという試みです。
振り返ってみれば、幼少期に物の名前や計算の仕方、文字の読み書きなどは習いましたが、自分自身のカラダを知ること、怒り、喜び、悲しみなどの感情に対する対処法を習うことはありませんでした。
三つ子の魂百までも
幼少期にこういった考え方を学ぶ重要性を自分自身も認識をしましたし、勉強をして社会へ広げていければと思っています。
学会では、講習会などで、新しい研究や考え方に触れることができましたが、いわゆる「夜のお勉強会」も楽しみの一つです。
「お酒のんで楽しんでるだけちゃいますの?」
なんて言われそうですが、先輩方とお酒を飲み交わすなかで、講演会では決して語られる事のないような深いお話が聞けるのです。
次回の学会は福岡、東京、大阪と続きます。
もう少し余裕をもった日程で参加できればいいなと思っています。
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