先日NHKの番組で
「東洋医学 ホントのチカラ〜科学で迫る 鍼灸・漢方薬・ヨガ〜」
が放送されました。
なかなか説明の難しい鍼灸、東洋医学の世界をわかりやすく解説されていて、みなさまから好評を得ています。
放送は終了しましたが、オンデマンドで見れますので、まだ見ていない方は是非御覧ください。
NHKオンデマンド「東洋医学 ホントのチカラ〜科学で迫る 鍼灸・漢方薬・ヨガ〜」
面白い内容だったので、ご紹介させて頂きます。
目次
腰痛に対する鍼灸治療
俳優の土屋手晃友之さんが北里大学東洋医学研究所を訪れて鍼灸治療を体験しました。
慢性の腰痛持ちの土屋さんに対してまず、頭のてっぺんにある「百会」のつぼに刺鍼をしました。
「腰がいたいのに頭に鍼するの??」
百会には体全体をリラックスさせる効果があります。
症状に対して局所だけの治療ではなく、体全体のバランスを考えながら治療する東洋医学ならではの治療方法です。
そして、背部、腰部、下肢など、関連するツボに鍼をしていくと筋肉が緩み、背骨の歪みも改善されました。
なぜ百会に鍼をするとリラックスできるのか、なぜ筋肉に鍼をすると緩むのかがさまざまなデーターを使って説明されていていました。
離れたツボの秘密
鍼灸治療において、肩の痛みを手や膝でとったり、腰の痛みを足や手のツボで治療することは良くあります。
体の中には「経絡」という気の流れがあり、ここを整えることで痛みやさまざまな症状が改善するからです。
また、トリガーポイントという概念もあり、筋肉の中にある硬結が離れた部位に痛みを出す(関連痛)ので、痛みのある部位を治療していても、原因の部位(トリガーポイント)を治療しないと症状は改善しないのです。
明治国際医療大学の伊藤和憲先生が肩こりに対してのトリガーポイント治療を紹介されていました。
肩や首に痛みがある被験者に対して腕の後ろにあるツボを刺激することで、4人中3人に大きな症状の変化がありました。
肩こりというと、肩の痛いところをマッサージする方が多いとおもいますが、すぐにまたこってくるという方は試してみるといいかもしれませんね。
西洋医学×東洋医学 最先端現場の鍼灸治療
東京大学病院では、西洋医学と東洋医学の連携が進められています。
今回は、脊柱管狭窄症の手術後の痛みや痺れに対しての東大病院での取り組みが紹介されていました。
リハビリテーション科の粕谷大智先生は、腰椎5番の神経障害による神経痛に対してスネの外側のツボに鍼をすることで、腰椎5番の神経血流がよくなり、痛みや痺れの改善に繋がることを発見し、データーを蓄積して発表をされています。鍼治療による効果を
- 薬を飲んだ人
- 運動をした人
- 鍼治療をした人
で比較をすると、鍼灸治療を受けた方たちが優位に症状の改善が見られたとの事でした。
西洋医学と東洋医学の併用が進んでいて、全国では、20を超える大学病院や多数のクリニックでも併用治療が行われています。
米軍が開発した驚異の耳鍼治療
私達の体には、361個の正穴、250以上の奇穴があるとされています。
その他にも、手のひらや、足の裏、耳、頭など、多数のツボがあり、治療で使われています。
今回は、アメリカ空軍で開発された耳への鍼治療が紹介されていました。
長年腰痛で苦しみ、最近は痛みのため日常生活に支障をきたす痛みを抱えた兵士に対して、長さ5ミリの小さな鍼を耳のつぼに刺していくと、数本の鍼で、痛みが8/10から1/10まで下がりました。
耳への鍼治療は、前頭前野の脳血流を良くし、痛みの緩和に即効性がります。
この方法は「戦場鍼治療」として、緊急を要する戦場で、簡単に早く痛みを和らげる方法として多くの軍で広まっています。
死者30万人を出したハイチ大地震でも被災地支援として使われたそうです。
頻尿もツボで改善
日中でも、夜間でも、頻尿に悩む方は多いそうです。
昼間の頻尿を訴える方は3300万人、夜間の頻尿を訴える方は4500万人いるそうです。
実験では、頻尿で悩む女性に集まってもらい、一日3回、5日間「会陰」を刺激する方法で実験前後のトイレへの回数を調べました。
結果は、全員に良い影響があり、中には、数10分毎にトイレに行っていた方が、数時間我慢ぜずに過ごせるようになったそうです。
「会陰」への刺激によって、膀胱の収縮を促す仙髄の自律神経が遮断された事による影響だと考えられます。
新しい命、誕生の現場で
妊娠後期に心配な逆子。
現代の産科事情では、逆子になるとほぼ帝王切開での出産となります。
逆子体操や時には医師による回転術なども行われますが、もっと簡単で効果的な方法が東洋医学にはあります。
今回ご紹介頂いたのは、せりえ鍼灸治療室 辻内敬子先生。
足首の「三陰交」や小指の「至陰」に針やお灸で刺激を入れていく事で、子宮やへその緒の血流を良くし、逆子が治りやすい環境を作ります。
逆子に鍼灸を使う場合と使わない場合では改善率が5倍程度の違いがあるそうです。
鍼灸でキレイになりたい。美容鍼
女性なら誰しも興味があるであろう「美容」。
この業界にも鍼灸治療は広がりを見せています。
ご紹介頂いたのは、東京有明医療大学 安野富美子先生。
美容鍼では、顔のツボに鍼を打ち、顔周りの筋肉の血流循環を良くし、老廃物を流します。
また、顔だけでなく全身に治療をする事で、単なる美容ではなく、内側から美しくなる効果が期待できるとの事です。
人間だけでなく動物にも
鍼をうけるのは人間だけとは限りません。
私もこの業界に足を踏み入れたのは、競走馬の鍼治療と出会ったことがきっかけでした。
番組でも、変形性脊椎症で下半身の動きが悪くなった犬に対して鍼治療を行い、元気に走れるようになった様子を紹介していました。
アフリカでお灸?意外なワケとは
アフリカで活動するボランティア団体「モグサアフリカ」はアフリカでお灸を広める活動をしています。
その目的は「結核」への補助療法です。
結核は、結核菌に感染することにより発症する死亡率の高い病気です。
アフリカなど途上国を中心に猛威を奮い、毎年多数の死者を出しています。
医療事情が悪く、貧困が問題となっている途上国では、薬の供給が十分でなかったり、栄養状態が悪く、十分な治療が行えない現状です。
そこでお灸の免疫力が高める力、病気の回復が助けらる力に注目したこの団体は、お灸を「足の三里」というツボを中心に行う方法を広め、大きな効果を出しています。
我々の業界としても非常に注目をしている活動です。
さいごに
今回の番組では、この他にも「ヨガ」による脳への影響や、漢方薬についての紹介など、東洋医学を幅広い観点からとらえた構成でした。
番組で放送されている内容は、普段、私達鍼灸師が行っていることであり、来院された患者さんに説明をしていることですが、百聞は一見にしかず。
私の下手な説明を何度聞くよりも、こういったメディアで情報をまとめて流して貰えると、皆さんの東洋医学に対する理解度がグンとあがります。
ありがたいことです。
まだ観ていない方、もう一度観てみたい方は是非オンデマンドで!
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